実規模UASB+DHSシステムによる下水処理の実証試験(インド)

背景

WHOの報告によると、2000年における上下水道設備の衛生に起因する下痢や他の疾病 (住血吸虫症、トラコーマ、腸内寄生虫による感染症など)による死亡者数は220万人以上にのぼり、その大半は5歳未満の乳幼児であると推定されております。そこで、2002年の持続可能な開発に関する首脳会議 (WSSD)では、下水道設備を利用できない人の割合を2015年までに半減させるという目標が掲げられ、健康リスクを低減することが図られています。しかし、経済的に脆弱である途上国では、なによりも経済発展が優先され、活性汚泥法に代表される先進諸国の排水処理技術の導入が進まない現状であるため、途上国に適用可能な低コスト型排水処理システムの開発が望まれております。

そこで我々は、高速嫌気性処理法であるUASB (Upflow Anaerobic Sludge Blanket)と我々が独自に開発したDHS (Downflow Hanging Sponge)を組み合わせた新規下水処理システムを提案しました。これまでのラボでの研究開発により、UASB+DHSシステムは非常にシンプルな運転管理において、優れた処理水質を獲得可能であることに成功しました。そこで、本システムを途上国においても”持続可能な下水処理システム”として十分に適用できると考えました。

そのような中、ガンジス河やヤムナ河の浄化計画を積極的に進めているインド政府が、本DHSリアクターに注目し、ニューデリーから140kmほど離れた都市カルナールの下水処理場に、実規模DHSリアクターを建造しました。現地下水処理場での実証実験は2002年5月から行われ、10月から本研究室の学生であった大久保が現地での滞在を行い、長期間のモニタリングを開始しました。その後、本研究室のインド班が現地に長期間滞在し、運転管理および水質モニタリングを行ってきました。その結果、実規模DHSリアクターは、技術力の乏しい現地スタッフによる運転管理においても、良好な処理水質(BOD: 6mg/L)を獲得できることが判明しました。また、本DHSは内部に充填したスポンジ担体の交換なしで、5年以上の運転を継続可能であることが実証されました。現在では、東北大学の原田秀樹教授(元本学教授)の研究室を中心に長期間の性能評価が行われております。

写真 実規模DHSリアクターの外観

小野寺崇

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